ヒューマノイドロボット / 中国EMS / 量産
ヒューマノイド量産の主役は「スマホ工場」だった──中国EMS大手が一斉にロボットに賭ける理由
公開日: 2026年7月5日出典: 36Kr Japan
フォックスコン、ラックスシェア、レンズ・テクノロジー──かつて中国を「世界の工場」に押し上げたスマホ受託製造(EMS)大手各社が、2026年に入って相次ぎ人型ロボット業界への参入を表明した。利益の薄い受託製造から脱却し、人型ロボット量産という歴史的チャンスを捉えようとする戦略転換の全容を36Kr Japanの記事から解説する。
スマホ工場がロボット工場に変わる
中国EMS大手の竜旗科技(ロンチー・テクノロジー)が江西省南昌市に構えるスマート工場では、ロボットユニコーン「智元機器人(Agibot)」の車輪式人型ロボット「精霊G2」2台がタブレットの生産ラインに導入され、検査工程での製品搬入・搬出作業を担っている。処理速度は1時間あたり最大316台、8時間連続作業の成功率は99.5%を超える。
これは単なるデモではない。フォックスコン、華勤技術(ホアチン・テクノロジー)、立訊精密工業(ラックスシェア)、藍思科技(レンズ・テクノロジー)など、中国のスマホサプライチェーン大手が次々と人型ロボット業界への本格参入を進めているのだ。
なぜEMS各社はロボットに賭けるのか
背景には3つの要因がある。
1. 人海戦術の限界。従来の検査工程は昼夜2交代制で1日10時間労働、スタッフの総歩数は3万歩に及ぶ。取り扱う部品の単価が高いため厳しい管理体制が敷かれ、若者に敬遠されて離職率は月15%に達している。
2. 薄利からの脱却。EMS各社の粗利率は10〜13%程度で推移する一方、ロボット関節に使われるハーモニック減速機大手の緑的諧波(リーダードライブ)の粗利率は37%にのぼる。スマホ出荷台数が伸び悩む中、「薄利多売」からの脱却が急務だ。
3. サプライチェーンの互換性。スマホのカメラモジュールはロボットのセンサーに、マイクロモーターは精密制御に、高密度電池や液冷技術は給電・放熱にそのまま転用可能。チタン合金やカーボンファイバー、折りたたみヒンジもロボットの外骨格に応用できる。
EMS各社のロボット戦略一覧
フォックスコン(富士康科技集団):思霊機器人(Agile Robots)などに出資。16自由度のダイレクトドライブ式ロボットハンドを独自開発。5年以内に2000台以上を自動車生産ラインに配備予定。UBTECHと戦略提携。
ラックスシェア(立訊精密工業):衆擎機器人(EngineAI)に出資。ハーモニックギアなどコア部品を独自開発。2026年に3000台出荷計画。50億元(約1200億円)を投じて江蘇省常熟市にロボティクス本部基地を建設中。
レンズ・テクノロジー(藍思科技):普渡科技(Pudu Robotics)と霊宝機器人(CASBOT)に出資。ロボットコア部品の開発と本体組立を手がける。スマートロボット産業パークの年産能力は最大50万台。Agibotとの共同出資でロボットメーカー設立。
ホアチン・テクノロジー(華勤技術):豪成智能を買収し、完全子会社として翌人智能を設立。二足歩行式と車輪式の人型ロボットを開発中。
ロンチー・テクノロジー(竜旗科技):Agibotに出資し、開発・生産ライン・サプライチェーンで協力。数億元の調達契約を締結、自社工場に人型ロボット約1000台導入計画。
人型ロボット量産の現実
英調査会社Interact Analysisによると、2025年の世界の人型ロボット生産台数は前年の約10倍の2万台を突破。中国の宇樹科技(Unitree Robotics)と智元機器人(Agibot)がそれぞれ5000台余りで、2社合計が全体の半数を占める。
業界関係者は「1000台」という数字を2026年の重要なハードルと位置づけており、これを超えることで人型ロボットがデモ段階から産業化に進む分水嶺になると見られている。スマホEMS各社が持つ「世界最高の量産力」は、このハードルを越える鍵となる。